1976年は、もう一冊、思い出に残っている本を作りました。
太田裕美さんのフォト&エッセイ「まごころ」です。
「雨だれ」でデビューして、4枚目のシングル「木綿のハンカチーフ」が大ヒット。
その翌年の初夏、初めて太田裕美さんと会いました。
マネージャーの松田さん、チーフマネージャーの藤岡さん、宣伝担当の佐藤さん、CBSソニーの丸山さん。懐かしい人の顔が浮かびます。
この本が忘れられない一冊となったのには、彼女とそのスタッフがいつも和気藹々として楽しかったのと、カメラマンの峰尾さんとは良き先輩としての付き合いが続き、エディトリアル・デザイナーの吉本憲三さんとは生涯の友となったからです。
撮影は夏の北海道で行われました。裕美ちゃんのコンサートツアーに同行。旭川、夕張、札幌だったかな。楽しかった。
ロケハンもせず、移動の合間の時間で、行き当たりばったりの撮影。
編集者としては失格ですが、こういう撮影もあるのか、といい勉強になったのを覚えています。チームワークの勝利ですね、きっと。
裕美ちゃんの実家に泊めていただき、マネージャーの松田さんと三人で、打ち合わせをしたこともありました。原稿の最終チェックをしたんだったかな……。
ところが、ダメ編集者の僕ときたら、実家のお寿司屋さんで、お酒をたらふくいただき、お風呂に入って、すぐに寝てしまったのだから、最低ですよね。
カメラマンの峰尾さんのスタジオでも、よく打ち合わせをしました。湯島天神のすぐ隣にある、昔は料亭だった場所に、平屋建ての母屋と現代的なスタジオ。
横浜に住んでいた僕は、よく泊めていただきました。旅館のような朝食は、すごく美味しかった。
デザイナーの吉本さんとは、歳は僕が1つ下でしたが、なんだか気があって、その後もよく仕事をしました。お酒もよく飲みに行きました。
その吉本さんが先日、急性心筋梗塞で亡くなってしまったのです。
近いうちに飲もう、と約束したばかりなのに……。訃報を聞いたときは、呆然としてしまって、言葉が出てきませんでした。
出会いがあれば別れもある。人はいつか死ぬ。わかっているけど、哀しさがつのるばかりでした。
共にHAPPY DAYSを過ごしてきた仲間の死は、もう何人になるだろう……。
太田裕美さんの本が導いてくれた生涯の友。吉本憲三。合掌。しばしの別れです。さらば。
近いうち、吉本さんを肴に峰尾さんと酒を飲む約束をしました。
僕の記憶の中に吉本さんがいる限り、僕の中では生きていると思っています。
思いっきり悪口を言いますから、怒らないでくださいね。
ノアズブックス 編集長 Hideo. K
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