2011年7月13日水曜日

田村裕「ホームレス中学生」

ワニブックスの編集担当取締役に就任して,初めて読んだゲラ(校正)が「ホームレス中学生」でした。
面白かったし,泣ける。感動ものです。これは売れるかもしれない,と直感的に思いました。

製作段階では6,000部で計上してありましたが、それでは少なすぎます。社長にその旨を伝えました。
最終的には,初版2万部でスタートした「ホームレス中学生」ですが、口コミで関西方面から売れていきました。そして、NHKで取り上げてくれたのを機に,一気にミリオンセラーに!

内容が良かったのはもちろんですが、なんといってもタイトルが良かった。著者がつけたかったタイトルにしていたら,おそらくこれほどには売れなかったでしょう。



著者の田村裕さんは「ウンコの神様」というタイトルにしたかった,といいます。うーん、ですよね。
ホームレスと中学生,どちらも普通の単語ですが,このふたつが組み合わさると、インパクトのあるタイトルになります。考えたのは、担当の女性編集者。すごい!

本はタイトルが大事だ,と改めて痛感。そして、我がツキの良さを実感。
ほんと、これまでの人生を振り返ると,運が良かったと思わずにはいられません。
HAPPY DAYSは、すべてツキのおかげ。そして、人との縁。そう思いました。

ワニブックスでは,本作りより、組織作りに専念しました。30年近くたつと、会社というものも金属疲労したような状態になります。
いくら強い組織でも,時の経過とともに脆くなってしまうもの。

これには、アミューズで株式上場に携わった経験が、ずいぶん役に立ちました。あのときはまるで、ボランティアのようにして上場の一部始終に関わったのが,こんなところで生かされるとは……。
何でもやってみるものですね、人生は。そう痛感しました。

編集担当役員として一番こだわったのは、やはりタイトルです。
不思議なもので,いいタイトルというのは直感でわかります。何度も考え、何度もやり直したものに限って,駄作になりがち。

センスも大事です。言葉のセンス。こればかりは、教えられるものではなく,自分で身に付けていくしかありません。
本を読んだり,映画を見たり,旅をしたり、美味しいものを食べにいったり、友と語り合ったり……。
どんな暮らしをするかによって、センスは磨かれていくような気がします。

2年のつもりだったワニブックスには結局,倍の4年ちょっとお世話になりました。
扶桑社を辞めた佐藤俊彦くんを迎えて,ワニ・プラスという子会社も作りました。隔月で、文庫本を発売しています。そこで、編集者としてお手伝い。それは、いまでも無給で続けています。

2010年11月19日,ワニブックス退社。少し,のんびりするつもりだったのですが……。
2010年12月24日、株式会社ノアズブックス設立。家族3人で、ちっぽけな会社を、でっかい夢をもってスタートさせました。

ノアズブックス 編集長 HIDEO K.

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