2011年6月16日木曜日

鈴木康博「Sincerely」のプロモーションビデオ

コナでの撮影を終えると、深夜にロケバスで島の反対側にあるヒロまで移動することになりました。ヒロは日系人の多い、Big Ilandハワイ島のなかでももっとも大きな町です。
時間がもったいないからなのか、ほかに理由があったのか、いまとなっては真相はわかりませんが、とにかく強行軍の深夜移動です。

外灯がほとんどなく月明かりのなか、ロケバス2台で一路ヒロへ――。
僕は鈴木さんと竹下さんと同じバス。お酒を飲みすぎたのか、竹下さんは居眠りをはじめました。鈴木さんはヘッドホンで音楽を聴いているみたいです。

僕がぼんやりしていると、鈴木さんが突然、優しい口調で話かけてきました。
「梶原くんは、何をやりたいの? 中途半端なことしていていいの?」

どうやら、僕のことを心配してくれているみたいなのです。編集者なのに、今度の仕事では役割がはっきりしていない、しかもラジオ番組の録音までやっている……。
音楽一筋できた鈴木さんには、僕の仕事ぶりがいい加減に映ったみたいなのです。30歳半ばになって、本を作りたいのか、プロデューサーになりたいのか、便利屋でいいのか……と、問いかけられたように感じました。

このあと、30分くらい、鈴木さんといろいろなことを話しました。中学・高校の先輩でもあり、僕が作った会社に仕事を発注してくれた恩人でもあり、この時間はとても有意義でした。
ある意味、このとき鈴木さんと本音で話せたからこそ、いまでもずっと編集の仕事をつづけているのかもしれません。好きなことを仕事にできているのは、何よりも幸せなことです。やっぱり、僕は本が好きなのです。作るのも、読むのも。

早朝、ヒロに着きました。撮影は順調。僕も何かひとつ吹っ切れたようで、毎日がHAPPY DAYSでした。
いまでも脳裏に浮かぶのは、日系人の床屋さん、鈴木さんがウクレレを弾いて歌ったお店、サンセットに染まる海辺のバスケットコート、ブラックサンドビーチ、誰も泳いでいない青い海と白い砂、野生のコナゴールド……。

撮影は日本に帰ってからもつづきました。この2ヶ月間、はじめて本を作らなかった日々を過ごしました。忙しかったけど、楽しかった。
でもじつは、プロモーションビデオの製作で大変なのは、これからだったのです。編集作業です。これは本作りと同じです。違うのは、本作りするときの編集者は孤独な作業になるけど、ビデオの編集はディレクター、エンジニアの共同作業。

鈴木康博「Sincerely」のPVに収録されている曲は、「愛をよろしく」「君の誕生日」「瑠璃色の夜明け」「夏の日の午后」「僕と海へ」「今は確かに」「入り江」「ラララ~愛の世界~」「帰らないで」の9曲。素晴らしいアルバムですし、いい映像です。
この作品に携われたことは、僕自身、誇りに思えますし、いつまでも忘れられないこと。DVDがあれば、いますぐ観てみたいな……。

僕が編集者としてずっと仕事をしているのは、鈴木さんのひと言があったからです。中途半端なことしてていいの、というひと言が。

ノアズブックス 編集長 Hideo. K

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