2011年7月2日土曜日

福山雅治「DISTANCE」

アミューズブックスで作ったアミューズ所属のアーティスト本は、じつはそんなに多くありません。福山雅治さんの写真集は、思い出深い一冊です。
福山チームにはずっとリクエストしていたのですが、なかなか実現できず、最終的にはいまの社長である畠中達郎さんが出版を決めてくれました。嬉しかったですね。

カメラマンはハービー山口さん。プロデューサーはグーフィー森さん。デザイナーは辻さん。
担当編集者としては、何もやらなかったような気がしています。ひたすら、いい本を作ろう、と思っていただけで……。

1999年2月発売にあわせて、有楽町阪急で写真展を開催。
福山さんからの希望は、ただひとつ。装丁に対するこだわりだけでした。布の表紙にしたい、と。
見本を2冊作りました。紺色の布と、茶色の布で。
紺色の方は卒業アルバムのようでNG。茶色ももう少し淡い感じにしたいという要望が……。

既製のものでは布が見つからず、印刷会社と相談して、オリジナルの布を作りました。それが本になったものです。
3万部の初版はすべて、そのオリジナルの布表紙。素晴らしい仕上がりだったと思います。

そこに箔押しの文字でタイトルと著者名。さらに、空押しをしたところに小さな写真を貼り付けました。
この写真をオリジナルプリントにしたかったのですが、どうしても原価がありません。仕方なく、印刷した写真に……。
いま思うと、オリジナルプリントの写真を貼った方がよかった、と反省。原価との戦いに敗れたことを悔やんでいます。

この写真集は、男性アーティストのものとしては3,000円という少し高い値段設定になっています。それだけ本作りにも凝っているし、取材費もかかっているのです。
ハービーさんは全国ツアーに帯同、そのステージとオフをもれなく写してってきてくれました。エネルギーが伝わってきます。

この写真集で編集者らしい仕事は、デザイナーの辻さんと一緒に、構成を決めたことです。辻さんの事務所で、ああでもない、こうでもない、と順番を決めていく……。
1998年の暮れも押し詰まった日に、最終的なOKが出たのを覚えています。そして、年明け早々に入稿。
写真展のスケジュールが決まっていたので、発売時期は絶対に守らなければなりません。これも編集者としては大事な仕事のひとつです。

いろいろな工夫を凝らした写真集は、いま見返しても、存在感あるものに仕上がっている、と自画自賛できます。
心残りは、ただひとつ。オリジナルプリントを使わなかったことだけ。原価意識を持つことは必要だけど、でも、ほかに方法はなかったのだろうか……。

記憶の中でもHAPPY DAYSであるためには、悔いを残さないようにすることが大事だ、と改めて思いました。
紙の本は電子書籍と違って、出来上がったら直すことはできません。実感です。
もう一度、福山雅治さんの本を作ってみたい、と思うのは、悔いを残した編集にリベンジしたいからかもしれません。

ノアズブックス 編集長 HIDEO K.

0 件のコメント:

コメントを投稿