2011年6月30日木曜日

3Dの「マジックアイ」は思い出深い一冊です

ワニブックスの濱口くんとは、ずっと付き合いがつづいていました。酒飲み友達のひとり。
1992年、僕が引っ越した恵比寿のマンションのすぐそばにワニブックスがあったこともあり、酒を飲む回数は飛躍的に増加。

そんなある日、濱口くんがニヤニヤしながら、一枚の紙を見せてくれました。暗い酒場で。
「これをじっと見ていると、不思議な世界が見えてくるんです」
そう言って濱口くんが見せてくれた紙は、ただ変な模様があるだけでした。黒い点の集まりです。

「見えるかな? すごいですよ、ほんと」
勝ち誇ったように言う濱口くん。見方を教えてくれるのですが……でも、何も見えません。時間だけが過ぎていきました……。
「えーっ!?」
思わず、僕の口から大きな声が……。



見えたのです。黒い点がいきなり、星に変わって浮かび上がってきたのです! 立体画像の出現です。
このときの感動は、いまでも鮮明に覚えています。不思議な世界が広がりました。3Dアート初体験でした。

「これ、本にしよう!」という僕に、濱口くんは「まだ種類があまりないんです」と残念そうにつぶやきました。
「大丈夫だよ。この感動は絶対、売れる本になるから」

数字、アルファベット、星、図形などが見えてくる素材はありました。
苦肉の策ですが、クイズ形式にして構成を考えました。とにかく、早く本にしたかったから……。

タイトルも「マジックアイ」という和製英語で決定。「マジカルアイ」では面白くないと思ったのです。
B5版のハードカバーで、どうにか32ページを埋めることができました。

濱口くんからコピーの紙を見せられてから、本ができるまで1ヶ月ちょっとだったと思います。
版権を持っているテンヨーという会社の近藤さんも驚くほどでした。

内容は決して濃くはありませんでしたが、ヒットする確信がありました。僕自身が面白かったからです。
これが見えたときの、あの感動は、絶対に人に伝わる、と思いました。

これをきっかけとして、濱口くんとのHAPPY DAYSが再開。よく飲んで、よく遊んで……楽しかったよね、濱口!
いまは亡き戦友との思い出はつきません。

マジックアイを発明したアメリカ人は、自分の会社にもマジックアイとつけるほど、この名前はポピュラーになりました。
類書もたくさん出版され、その嚆矢を飾れたのは、濱口くんが酒場で見せてくれた一枚のコピーがあったからにほかなりません。戦友に乾杯!

ノアズブックス 編集長 HIDEO.K

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