2011年4月4日月曜日

初めてのクイズ2

前回のクイズは「英語で一番長い単語は?」でしたが、これも親父から出されたのだと思います。もう半世紀近く前なので、記憶は不確かなことばかり。
それでも、2つのクイズだけは覚えているのですから、人間の記憶力は不思議ですね。

答えですが、答えを聞いて怒らないでください。と、最初にお断りしておきます。

答えは「smiles」。

理由は、sとsの間がmileもあるから、長い単語だというわけです。

この答えを聞いたとき、なんだかわかったような、わからないような妙な気分でした。
狐につままれたというか、狸にだまされたというか、なんだったんでしょう。自分でもよくわかりません。

このクイズから数ヶ月たった時、今度は先輩から奇妙なクイズを出されたのです。

小学校の同窓会かなにかの打合せをしていて、そこには中学生になったばかりの純真な僕と同級生の男女が数人、そして中学2年生から大学生までの先輩たちが数人、全部で10人ほどの人たちがいました。

打合せが一段落した時、大学生の先輩Aさんが「ブラックアートって知ってる?」と、いきなり突拍子もないことを言ったのです。
すぐに反応したのは高校生のB子先輩。

「知ってる、知ってる」と嬉しそうに言いました。

何がそんなに嬉しいのか、変な気持ちを覚えたのですが、すかさずAさんが「じゃあ、これから不思議なアートの世界へ、君たちをご招待します。B子さん、水先案内人を頼むね」と、何やらおごそかな口調で言ったのです。

「僕とB子さんはテレパシーで通じ合っています。今から僕が後ろを向くので、みんなは何かひとつのものを指差してください。それを後ろを向いていた僕が当てるというのが、ブラックアートです」

そういうとAさんはクルッと後ろ向きになり、B子さんにうながされるまま、僕が代表してテーブルの上にあったノートを指差しました。

B子さんの「A先輩、用意が整いましたので、こちらを向いてください」という合図で、Aさんは向き直ると、みんなの顔をぐるりと見回します。

何やら、不思議なことが起こりそうな予感に、僕たちは固唾をのみました。

B子さんが「では、始めますね。いいですか、A先輩」と言うと、Aさんは黙ってうなずきます。

「それはこれですか?」と言いながら、B子さんがテーブルの上の鉛筆を指します。
「違います」と即答するAさん。
「では、これですか?」と、コップを指すB子さん。
「うーん、それじゃないね。違う」とAさん。

僕たちはただただ、二人のやりとりを黙って見ているしかありません。

「じゃあ、これですか?」と、B子さんは黒のマジックを指します。
「いや、違うね」とAさんがキッパリと言う。
「それでは、これですか?」と、B子さんがノートを指差した瞬間、
Aさんが「それです!」と大声で言ったのです。

僕は思わず、隣にいた同級生のS子さんと顔を見合わせ、ア然とするばかり。

「すごいでしょ、ねっ!」とB子さんはなんだか嬉しそう。
「これがブラックアートの神髄です」と、Aさんは何やら予言者のよう。

それから同じようにして、Aさんが後ろを向いては、僕たちが指差したものを次々と当てていきました。
7回目か8回目かに、S子さんが「わかったみたい」と、遠慮がちながら、どこか勝ち誇ったような声をあげました。

次からは、AさんとS子さんが後ろを向き、僕たちの指差したものを当てていきます。
そして、S子さんと同じように、ブラックアートがわかった人が増えていきました。
一人、また一人、と。

そして、とうとう僕だけが取り残されてしまったのです。
S子さんの哀れみの視線がまぶしかったなあ。

1時間以上たっても、答えがわかりません。
というより、なんだか一人だけ仲間はずれにされたようでした。

そんな僕を哀れんだのか、S子さんが「今度は私に当てる役をやらせてください」と言うと、僕に微笑みかけたのです。

S子さんは、自分の黒髪に手をあて「それはこれですか?」。全員が「違います!」。
次に、S子さんはコップを指差し「これですか?」。全員の「そうです!」という笑いまじりの声。
「もう一度、お願いします」と僕。

S子さんは黒い髪留めを手にして「それはこれですか?」。全員が「違いまーす」。
次に、S子さんは僕の腕時計を指差して「これですか?」。全員の「そうです!」という声に、一拍遅れて「そうです!」と僕。

やっとわかりました。
そうです。ブラックアートは『黒の芸術』ではなく、ただの『黒のあと』だったのです。

黒のあとに指差したものが、ブラックアートの答えでした。

S子さんの優しさに、僕は抱きつきたい気分でした。

この単純な遊びは、いったい誰が考えたのでしょうか。
半世紀近くも前に、もう作られていたのですから、驚きです。

18年ほど前に作った「世紀末クイズ」という本に載せましたが、このブラックアートの面白さは伝わらなかったかもしれません。
僕のこの文章を読んでも、おそらく同じでしょう。

みなさんもブラックアートを実際にやってみてください。
ホワイトアートもレッドアートもできますからね。
ただ、意地悪はほどほどに、を忘れないでください。

みなさんが、HAPPY DAYSになりますように。

ノアズブックス 編集長 Hideo K.

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