2011年6月19日日曜日

ニッポン放送「究極の選択」

1988年1月に発売された「10回クイズ」。これは鴻上尚史のオールナイトニッポン編。
次の3月に出た「新早口言葉ベロダス」こちらは三宅裕司のヤングパラダイス編。「3回続けて言って」が合い言葉でした。松島ディレクターと作った本です。

たとえば「夜やるアレ」を3回言ってみてください。意外に難しいものです。
「バス ガス爆発」というのもありました。これはけっこう難しい。短い言葉なのに、いざ3回続けて言うとなると、できないというのがミソです。

そして、1989年3月に発売された「究極の選択」は、また鴻上尚史のオールナイトニッポン編。
これは、宮本さん、森谷ディレクター、土屋編成部員たちと作りました。そもそもは、たったひとつの問題があっただけです。

「絶対にどちらかを食べなければいけないとしたら、どっちを選ぶ?
カレー味のウンコ と ウンコ味のカレー」



これは、どちらもイヤですよね。食べたくない! でも、食べなくてはいけない! だから、究極の選択なのです。
扶桑社発売の「週刊SPA!」でも、編集部の佐藤俊彦くんに頼んで、コーナーを作ってもらいました。こうした番組と雑誌の連動は、初めてのことだったと思います。

いまでは「カレーとウンコ問題」とか言うらしいですが、こういう考察が生まれるほど、究極の選択は大ヒットしたのです。
いくつか、思い出すままに書いていきます。

「どっちを選ぶ? 頭のいいウニになる と 頭がウニになる」

「結婚するならどっち? 性格の悪い金持ち と 性格の良い貧乏人」(本に載っているのとは違っているかもしれません)
「美人だけど性格が悪い と ブスだけど性格がいい」(こんな問題だったかな?)

「どっちを選ぶ? でかい乳頭 と 黒い乳首」(これは相原コージさんにイラストをつけてもらいました)

などなど、類似本もたくさん出て、裁判にもなりました。
結果は「ラジオ番組の人気コーナーにつけられた「究極の選択」という題号と類似した題号の書籍の発行について、「究極の選択」は営業表示や商品表示には当たらないとしたもの(東京地裁平成2年2月28日決定)」で敗訴。

じつは、この本の発売をめぐっては、扶桑社で大問題が持ち上がったのです。もう時効の話なので、書いてもいいでしょう。

当時の片岡社長は、相原コージさんの漫画を見て「この本をこどもが読んでいるのを見た親の気持ちを考えてみろ」みたいなことを言っていたらしい。
その漫画はニッポン放送にも見せていたので気にせずにいたのですが、見本ができる前日、違う編集部の編集長を務めていた吉村さんに相談したところ、片岡社長にきちんと話しておいた方がいい、ということに。

夜遅く、新宿ハイアットリージェンシーのバーで片岡社長に会いました。吉村さん同行のもと、相原コージさんの漫画をそのまま載せたい、了承してほしい、と訴えたのです。
最終的に片岡社長は、発行元のニッポン放送が了承すればいい、という言質をとることができました。

ところが、見本ができた日になって、ぜんぶ刷り直しが決定したのです。片岡社長に理由を聞くと、ニッポン放送が反対している、と。
すぐに、当時のニッポン放送編成部長O氏に電話しました。O氏いわく「おたくの社長が反対しているんだから、こちらも賛成できないよ」と、日和見的な応答。
もういちど、片岡社長に直談判。しかし、もうすんだことだ、のひと言で決着させられました。

3万部の刷り直しですが、僕と担当編集者の磯くんはおとがめなし。T編集長とT担当役員は減俸になってしまいました。納得がいかない納め方でしたが……。
悔しかったので、見本の本を関係者に送りました。なぜ、刷り直しになったのか、わかる人はひとりもいませんでした。

ベストセラーを連発してHAPPY DAYSを謳歌していた驕りがあったのでしょうか。

相原コージさんのところへ磯くんとふたりで行き、事情を説明しました。相原さんは悔しさというより情けなさそうな顔をして、できるかぎりイラストを使うことで了承してくれました。
カバーのインパクトあるイラストも相原コージさん。ほんとうに申し訳なかった、と思い出すたびに悔しさが募ります。

大好きだった片岡社長だけに、この刷り直し事件はいまでも忘れることができません。こうやって書いていると、いろいろなことが思い出されます。
この事件がなければ、片岡社長から扶桑社入りを勧められたとき、すんなりお世話になっていたと思います。それも人生。これも人生。片岡社長に合掌。


ノアズブックス 編集長 Hideo. K

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